たくみの営業暴露日記

家族ゲーム~たくみの営業暴露日記アナザーストーリー~ #10 夢から醒めて

#10 夢から醒めてたくみの営業暴露日記
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#10 夢から醒めて

──4月某日

trururu……

「あ、美子ちゃん? 丁度今電話しようと思ってた所。丁度今仕事終わった所だから──」

「あ、お兄さん……幸子です」

「え? 幸子ちゃん? 珍しいね、幸子ちゃんが俺に電話してくるなんて。何かあった?」

「落ち着いて……聞いて下さいね。お姉ちゃんが……倒れました」

「……え?」

「〇×病院で……今──」

────…………

 

──某病院

「……美子ちゃん……ごめん……俺の……せいだね……」

「…………」

「狭心症って……極度のストレスと疲労が原因……だよね……」

「…………」

「俺なんかの為に……こんなになるまで一緒にいてくれて……無理して……留年までして……バカ!」

「…………」

「死ななかったから良かったものの……危うく大事な人がまた……」

「…………」

「俺……美子ちゃん達に甘えすぎてたね……巻き込んじゃったね……迷惑かけちゃったね……」

「…………」

「ダメだよ、俺なんかを構ってちゃ。……美子ちゃんはまだ若いんだから。これから輝かしい未来が待ってるんだから。幸せな人生歩んでいかなきゃ」

「…………」

「彼氏だっているでしょ? 友達だっているでしょ? やってみたい事だってあるでしょ? 今しかできない事、もっとやらなきゃ」

「…………」

「たくさんの友達に囲まれて……ちょっとOLやって……結婚して……赤ちゃんできて……子育てして……幸せを絵にかいた様な人生送らなきゃ……」

「…………」

「俺は……美子ちゃん達が幸せになってくれれば……幸せになるのを遠くから見れたら……それで充分だから」

「…………」

「俺は……もういいから。俺は……もう終わった人間だから。……間違えた人間だから」

「…………」

「もう……これ以上の間違いはしない様にしないと……消えないと……」

「…………」

「美子ちゃん……慰めてくれて……ありがと。気を紛らわせようとしてくれて……ありがと。ずっと一緒に暮らそうって言ってくれて……ありがと。ホント……嬉しかったよ」

「…………」

「お兄ちゃん好きの妹役してくれてありがと。仲良し兄妹のフリしてくれてありがと。本当の妹……それ以上に思ってたよ」

「…………」

「今まで……本当にありがと。本当……楽しかった。心が安らいだ。幸せだった。このままずっと一緒に暮らしていけたらって……ちょっと夢見ちゃったよ」

「…………」

「けど……いくら仲良くなっても、本当のお兄ちゃんにはなれないから……ずっと一緒にいられないから……俺は本当の家族じゃないから……さ」

「…………」

「もう……十分だから。返して貰ったから。もう俺に付き合わないでいいから。これ以上付き合わせて幸せを奪ったら……美幸に怒られちゃうよ」

「…………」

「美子ちゃんも幸子ちゃんも……いい人過ぎるから……自分達からは俺を追い出すような事は絶対言えないよね……」

「…………」

「俺からお別れ……しなくちゃ。元の他人同士に……ならなきゃ。元の人生に……戻してあげなきゃ」

「…………」

「俺は……あすかを探さなきゃ。……逝ってあげなきゃ。……謝らなきゃ」

「美子ちゃん……バイバイ。……いつまでも元気で、幸せに、ね」

「…………」

約束

──去ろうとした時

「……お兄ちゃん……」

「あ、起こしちゃった? ごめん。もう行くから、ゆっくり寝てて」

「……行かないで……傍にいて」

「……じゃ、美子ちゃんが寝付くまで……ここにいるよ」

「……だったら、絶対寝ない!」

「何言ってるの……今は安静にしてないとダメだから、寝ないと……」

「……だって、お兄ちゃん……今ここを出たら二度と戻ってこない気でしょ?」

「──?! な、何で……」

「……ずっと聞いてたから」

「…………」

「お兄ちゃん……バカだね……」

「ま、否定はしないけど……何で?」

「義理や人情や恩だけで私や幸子がお兄ちゃんの面倒みてたと思ってるの?」

「……え?」

「お兄ちゃん好きの妹役、演じてたと思ってるの?」

「……え?」

「色々犠牲にしてお兄ちゃんと一緒にいたと思ってるの?」

「……違う……の?」

「私達が……私がそうしたかったからしたに決まってるじゃん! お兄ちゃんと一緒に暮らしていく事が……何よりも楽しかったんだから!」

「……けど、普通の当たり前の幸せな──」

「勝手に人の幸せを決めつけないで! 幸せの形は1つじゃないんだから!」

「…………」

「私だって……バカじゃないから分かってるよ。このまま一生暮らす事は出来ないって事くらい……本当の兄妹になれないって事くらい」

「…………」

「けど! もう少しだけ……家族でいてよ。……お兄ちゃんでいてよ。……夢、見させてよ……」

「…………」

「せめて私が結婚するまで……お兄ちゃんでいてよ。成長していく姿……見ていてよ。……迷惑かけないから、困らせないから……お願い……します……!」

「俺……迷惑じゃない? 邪魔じゃ……ない? 本当に……まだここにいていい……の?」

「いいに決まってるじゃん! お兄ちゃんがいないと私、幸せになれないんだから! 一番近くで私の事、見守っててよ!」

「……分かった。美子ちゃんが本当の幸せを手に入れるまで……傍にいるよ。幸せになる姿、一番近くで俺に見させてよ。……その瞬間まで、俺はお兄ちゃんでいるからさ……」

「……約束だよ? 誓える?」

「……誓うよ。約束は絶対守るから」

「……じゃ、キスして」

「──え?」

「……宣誓のキスだよ」

「……────」

「────♡」

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