たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 第三部 第19話:陽だまりの家

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たくみの営業暴露日記 第三部 第19話:陽だまりの家

3日後

■お茶の間にて

「────でね、こんなになったんだよ。凄いでしょ?」

「へぇ~、ホント凄いね」

「でしょ! お姉ちゃん、ホント凄いんだから。後ね、こんな事もあったんだよ。♪────」

「──へぇ~。それにしても、美子ちゃん、お姉ちゃんの事、滅茶苦茶好きなんだね。さっきからずっとお姉ちゃんの話ばっかじゃん」

「当たり前でしょ、お姉ちゃんは私達の誇りなんだから。滅茶苦茶美人で、頭も良くて、何でも出来て……私達とはまるで出来が違うんだから! 世界一のお姉ちゃんなんだから!」

「そっか……世界一の……お姉ちゃんか」

「そうだよ! そんなお姉ちゃんが……こんな私達の為に、毎日ボロボロになるまで働いて……一杯仕送りしてくれて……育ててくれて……ホント凄いんだから!」

「そうだね……お姉ちゃん、ホント凄いよね……そんな大変なのに泣きごと一つも言わないで、いっつも笑顔で……明るくて──」

「でしょ! 19歳の時からずっとだよ! 大学まで辞めて……凄いんだから!」

「──! そ、そんな前から……」

「私達がいなかったら、今頃大企業に入って、大出世してたんだから!」

「そっか……お姉ちゃん、凄いね」

「でしょ! でね♪─────」

──寝室

「……今日はごめんね。美子、うるさかったでしょ」

「いや、楽しかったよ。……俺の知らない美幸さんの話、一杯聞けたし」

「──! ま、ま~た、あの子、私の話を……ご、ごめんね」

「www 美子ちゃん、美幸さんの事、滅茶苦茶好きなんだね。4時間ず~っと美幸さんの話ばっか。世界一のお姉ちゃんだ~って」

「も……もう! あの子ったら~///」

「……美幸さんは今から5年後にはハリウッド女優になって、10年後には史上最年少の総理大臣になってるって……美子ちゃんが自慢げに話してたけど……そんな事、言ってるの?」

「!!! ちょ! そ、そんな話まで/// い、いや/// ち、違うから!」

「wwwwww」

「もう! そんなに笑わないでよ! ちょ、ちょっと嘯いただけだから///」

「美子ちゃん、思いっきり信じてるよ。そっか~、美幸さん、5年後にはハリウッド女優か~。……俺、マネージャーやろうか?」

「バカ──!///」

「wwwwww」

「けど、よく考えたら美子が家族以外と心開いてあんなに楽しそうに話してるの、初めてみた。たくみ君、よっぽど気に入られたんだね」

「ん? そう? なら、ちょっと光栄かも。……あ、総理大臣になったら、俺、秘書で雇ってね」

「ちょ! 話をぶり返さないでよ!/// バカ──!///」

「wwwwww」

 わずか数日後、何の違和感もなく同居している加藤がいた。田中はもちろんの事、妹達との仲をも急速に深めながら、時は流れていく。

5日後

「──これはどうやったらいいですか?」

「あ、これはこの公式を使って────」

「あ、そっか! じゃ、これは?」

「これは補助線引いて────」

「──ありがとうございました♪」

「どう致しまして。……幸子ちゃん、勉強熱心だね~。どこの高校狙ってるの?」

「お姉ちゃんと同じ、●▲高校です」

「──?! そこってかなりの進学校じゃん。幸子ちゃん、頭いいんだ~」

「いえ……私、バカだから、もっともっと頑張らないと……」

「まぁ、まだ入試まで時間あるから、今からやっていけば多分いけるよ」

「私……お姉ちゃんと同じ高校にいって、もっとも~っと勉強して、お姉ちゃんと同じ大学入って、大きな会社に入って……お姉ちゃんにラクさせてあげたいんです」

「……そっか……立派だね」

「お姉ちゃん、凄い苦労したから……私達の為に好きな事も出来なかった筈だから……早く立派になって、お姉ちゃんに恩返ししたいんです」

「……そっか……それ聞いたら、お姉ちゃん、きっと喜ぶよ」

「けど……私、バカだから……いっつもお姉ちゃんの足引っ張っちゃって、迷惑かけちゃって……」

「……そっか」

「私、お姉ちゃんみたいになるのが夢なんです。……すっごい高い目標だけど……私の憧れだから」

「……幸子ちゃんなら、きっとなれるよ。俺が保証するよ」

「はい♪」

──寝室

「えっと……今日は幸子の勉強見てくれてたの? ご、ごめんね。まさか、幸子までたくみ君に懐くなんて……」

「あ、いいよ、これくらい。けど、幸子ちゃんまで、ってどういう事?」

「あ、いや、ね……あの子、人見知りが凄い激しくって、大人しいから……私にすら殆ど話しないくらいだから……」

「ん? 何か普通に話してたよ? お姉ちゃんと同じ高校・大学に入って、大企業に入って美幸さんにラクをさせてあげたいって、言ってたよ?」

「──え?」

「今まで一杯苦労かけちゃったから、恩返ししたいって」

「……」

「美幸さんみたいになるのが夢なんだって。目標なんだって」

「……そ、そう……///」

「幸子ちゃんも……滅茶苦茶お姉ちゃん好きなんだな~、尊敬してるんだな~って感じたよ。……美幸さん、今まで凄い頑張ってきたんだな~って……思わず感動しちゃった」

「……────ッ」

「お? まさか泣いてるの? 何があっても涙を見せなかった鉄の女の美幸さんが?」

「……バカ────ッ」

「……良かったじゃん、美子ちゃんも幸子ちゃんも真っ直ぐ育ってるじゃん、美幸さんの背中みて。……立派だよ、ホント、素直に尊敬するよ」

「────ッ」

「ほら……そんなに泣いたら美子ちゃんや幸子ちゃんに聞こえて誤解されちゃうから。……俺の腕の中で、ね。パジャマ、汚れてもいいから」

「────ッ」

「ホント、良かったね……ホント、お疲れ様」

「────ッ」

10日後

「…………」

「へぇ~、そうなんだ。お姉ちゃん、そんな事までしてくれたんだ~」

「(コクリ)…………」

「へぇ~。豪君、お姉ちゃんの事、大好きなんだ」

「////// …………」

「そっか。大きくなったらお姉ちゃんと結婚して一生豪君が守っていくんだ~、凄いね」

「////// …………」

「え? 俺は恋のライバル? えっと……そ、そうなっちゃうのかな?」

「(コクリ)…………」

「……ありがと。豪君が立派な大人になるまで……責任もってお姉ちゃん守るから。安心して」

「(コクリ)…………」

──寝室

「え、え~っと……豪と何やってたの? き、気のせいかな……普通に会話してる様にみえたんだけど……」

「ん? 見ての通り、ちょっとおしゃべりしてただけだよ?」

「って、あの子、ダウン症で全く喋らないじゃん。なのに、なんで会話が成立してるの? しかも2時間も……は、初めてあんな光景見たよ」

「あれ? 美幸さん達は分からないの? ちょ~っと言葉にするのが苦手なだけで、よ~く観察すれば何言ってるか分かるじゃん」

「い、いや……喜怒哀楽くらいは分かるけど……何を考えているかまでは……わ、分かる筈ないじゃん」

「え~、そうかな~。俺も全部は理解出来てないかもだけど、8割くらいは合ってた筈だよ。普通にうなずいてたし、笑ってたし」

「た、たくみ君……す、凄いね。え、え~っと……な、何を話してたの? 私の事とか、な、何か言ってた?」

「あ、俺は紅の豚じゃないって怒ってたよ」

「──!」

「けど、お姉ちゃんは大好きだって。こんな俺の事を見捨てずにずっと優しくしてくれて、感謝してるって」

「……」

「いつか立派な大人になったら、お姉ちゃんと結婚して、一生幸せにするのが俺の夢だって、言ってたよ」

「……」

「とにかく、俺は一生お姉ちゃんの味方だから、力になるから……その事を伝えてくれって……俺に言ってたよ」

「……────ッ」

「良かったじゃん、豪君に好かれてて……気持ち、伝わってて……」

「────ッ」

「豪君と話してて……ホント、美幸さん、豪君の事、愛して接して来たんだな~って。……上手い言葉が見つからないけど……美幸さん、凄いな~って、立派だな~って……頑張ってきたんだな~って……」

「────ッ」

「ホント……世界一のお姉ちゃんだ、美幸さんは。……美子ちゃんも幸子ちゃんも豪君も……ホント、幸せ者だ、羨ましいよ」

「────ッ」

「そんな頑張り屋さんのお姉ちゃんも、たまには息抜きしなくっちゃね。……明日、ちょっと早起きしてみんなでピクニックにでも行こうか。のんび~りバーベキューとかしたりして、さ」

「……うん」

「料理は……美子ちゃん達にお願いしちゃおっか。たまにはラクしないと……ね」

「……うん」

「俺は……美幸さんに膝枕して貰って昼寝でもしてるよ」

「……バカwww」

11月19日

「ただいま──」

──パパパパーン(クラッカーの音×4)

「──?! え、え~っと……な、何?」

「「「誕生日おめでとー」」」

「──え?」

「あ、忘れてるでしょ、今日誕生日だって事」

「えっ……と……だ、誰……ま、まさか……お、俺?」

「他に誰がいるのよ~。今日でしょ? たくみ君の誕生日」

「そ、そういえば……す、すっかり忘れてた……」

「www とにかく、入って、入って♪ 今日はみんなでごちそう作ったんだから」

「あ、あぁ……って、ケーキに手巻き寿司にステーキにエビチリ……和洋中何でもアリだね」

「これが田中家のしきたりだからね。はい、シャンパンどーぞ、ご主人様♡」

「あ、ありがと」

「じゃ、たくみ君の25歳の門出を祝って、カンパーイ♪」

「か、門出って……何か違う様な……卒業式とか転勤とかのイメージの様な……」

「結婚式でも使うじゃん? 25歳に向けての新たなスタートだから、ね♪」

「な、なるほど……」

「じゃ、改めて、誕生日おめでとー」

「あ、ありがと。……────ッ」

「ちょ! な、何泣いてるのよ……」

「い、いや……何かジーンと来ちゃって……誕生日祝って貰ったのは、子供の時以来だったから」

「www いいでしょ? こういうのも」

「……うん」

「毎年、祝ってあげるからね」

「……うん」

「お兄ちゃん、はい、プレゼント♪」

「あ、ありがと、美子ちゃん……って、お兄ちゃん?」

「ぁ……ご、ごめんなさい……つ、つい……」

「www い~よ、お兄ちゃんで。これからそう呼んでよ」

「う、うん!」

「あ……わ、私も……プ、プレゼントです……お、お兄さん///」

「お! 幸子ちゃんまで。ありがと。……無理にお兄さんって言わなくてもいいよ? 呼びやすい様に呼んでくれれば。ただ……おじさんはやめてね。俺、まだ25歳だから」

「い、いえ……お兄さんって言う様にします。こんなお兄さん、欲しかった……ですから///」

「あ、ありがと/// な、何か照れるね……」

「…………!」

「お! 豪君まで? ありがと」

「そして、私は……ちょっと目を瞑って♪」

「ん? こうでいい?」

「……(チュッ)♡」

「!!!/// ちょ!/// な、何を///」

「ん? だから、プレゼント♡ 嫌だった?」

「い、嫌じゃないけど……皆が見てる前でしなくても///」

「あ~、お兄ちゃん、顔真っ赤だよ~、照れてるの~」

「バ、バカ!/// お、大人をからかうんじゃありません!///」

「wwwwww」

「みんな……ホント、ありがと……ね──ッ」

「あ~、お兄ちゃん、泣いてるの~? 私がナデナデしてあげよっか~?」

「バ、バカ!///」

「wwwwww」

1ヶ月後

「ただいま~」

「あ、お帰り~。今日はちょっと遅かったね。ご飯できてるけど、先にお風呂入る?」

「ん、じゃ、先風呂入ってからご飯食べるよ。ありがと」

「お兄ちゃん、遅~い。もっと早く帰ってきてよね。さっさとご飯食べて、またゲームで勝負しよ。……今日こそ絶対勝つんだから!」

「あ、お兄さん……ゲームの後で構わないですから、また勉強みてもらっていいですか?」

「美子! 幸子! いい加減にしなさい! たくみ君はお仕事で疲れて帰ってきてるんだから!」

「www いいよ、俺、ゲーム好きみたいだし、教えるのも嫌いじゃないし。じゃ、美子ちゃん、幸子ちゃん、ちょっと待ってて」

「──♡」

意味が分からないまま始まった田中一家との同居生活は、ビックリする程、加藤にフィットしていた。味噌汁の匂いと共に目覚める朝、会話が途切れる事のないお茶の間、そして光の灯る家へ戻る夜。

同居して約1カ月もした頃には、田中家の愛に包まれ、加藤はすっかり家族の一員になっていた。毎日が楽しかった、幸せだった、満たされていた。陽だまりにいる様に穏やかで温かくて居心地が良くて……怖いくらいだった。

挿話

はい、もう何が何だか、ですよね笑

田中と同棲……ではなく、田中家の皆と同居、でしたから。家族も書かないとダメだよな、と。

「い、いや……いくら何でも飛び過ぎでは? 田中だけでもお腹いっぱいなのに……」

というツッコミもありそうですが、意味ない事は書きませんって。一応、これでも必要最小限に絞っている「つもり」です、はい。

次回あたり、少し時間を進めて営業話を絡めていく予定です。

多分、後5話くらいで外伝は完結する……かな?

外伝ラストが、一番書きたかった事、かつ自分の黒歴史……というか殆どの人が知らない事……かつ、自分の礎になる事です。

もう少し、お付き合い下さいませ。

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